COLUMN
公開日:2023.05.31
自治体におけるさまざまな業務を、外部に委託したいと考えたことはありませんか? 多くの業界で注目されている「BPO」は、自治体業務でも導入が進んでいます。
今回は自治体BPOの実態や導入するメリット・注意点について解説します。実際にBPOを導入した自治体の事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
はじめに、BPOの基本を整理しておきましょう。アウトソーシングとは異なる概念のため、明確に区別しておくことが大切です。
BPOは広い意味での外部委託ですが、単純に業務の一部を外部の事業者に委託することではありません。BPOには次のプロセスが含まれます。
上記のプロセスを包括的に委託できることがBPOの大きな特徴です。BPOとは、業務プロセスを一括で外部委託することを指します。
外部委託の一形態として「アウトソーシング」が挙げられます。アウトソーシングとは、業務の一部を切り出して外部に委託することです。業務プロセス自体に変更を加えることなく、そのまま外部の事業者に委託することを指します。
BPOの場合、業務の企画・設計をはじめ、分析まで含めて委託できます。従来の業務プロセスを改善したり、必要に応じて変更を加えたりすることもあり得るのです。このように、業務プロセスの一部を切り出すアウトソーシングと、業務プロセスを一括で委託するBPOとでは対応可能な範囲が大きく異なります。
自治体業務において、BPOの活用はどのくらい広がっているのでしょうか。自治体BPOの市場規模の現状と今後の予測について解説します。
自治体BPOの市場規模は2017年度の時点で4兆2,339億円に達しており、前年度比3.2%増と拡大傾向にあります(※)。
自治体BPOが拡大している背景には、住民のニーズの多様化や事業規模の維持を余儀なくされている実態があります。自治体人口が減少し、利用者が少なくなっていたとしても、事業の縮小や撤退には踏み切れない事情を抱えているのです。職員の負担軽減や人員削減を実現するために、業務を一括して委託できるBPOの活用が広がっていると考えられます。
自治体向けBPOサービスの市場規模が引き続き年3.5%の成長率で推移した場合、2023年度には5兆2,127億円に達することが見込まれます。自治体がBPOを活用して業務を効率化・合理化することは、近年では一般的になりつつあるのです。
自治体業務の市場規模拡大に伴い、BPOサービス事業者も増加していくと考えられます。それぞれのBPOサービス事業者が独自のサービスを打ち出すことにより、自治体ごとに適したサービスをより一層選択しやすくなっていくでしょう。
※出典:矢野経済研究所「自治体向けBPO市場の実態と展望 」
自治体業務にBPOを導入することによって、具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。主な4つのメリットを見ていきましょう。
自治体業務に関するノウハウのある事業者に委託することで、職員の業務量を削減できます。近年は地方分権の推進により、自治体が担うべき役割が大きくなっているのが実情です。職員数が大きく変わっていないとすれば、職員1人あたりの業務負担は重くなるのが必然といえます。
自治体業務に必要なノウハウを保有し、実態に合わせて柔軟に対応できるBPOサービス事業者に委託することにより、職員が担当すべき業務をスリム化できることは大きなメリットの1つです。職員の業務過多や長時間労働が顕在化しつつある自治体においては、とくに実感しやすいメリットといえるでしょう。
現在の業務プロセスが内包している課題は、長年続いている慣習と深く結びついているケースは少なくありません。既存の業務プロセスに精通している職員ほど、慣習的に続けてきた業務の3M(ムリ・ムダ・ムラ)には気づきにくいものです。
BPOの活用を通じて、内部では気づきにくい業務の課題を洗い出し、客観的な視点で改善策を検討できます。担当者ごとに属人化しやすい業務の標準化を図ることにもつながるため、担当者の退職リスクに備えた対策にもなるでしょう。
業務プロセスを一括で外部委託することにより、職員をコア業務に配置しやすくなります。利用者へのきめ細かな対応にも注力しやすくなるため、行政サービス全体の質を向上させることにつながるでしょう。
業務過多や長時間労働は職員の疲弊を招きやすく、ヒューマンエラーの原因にもなります。こうした状況が慢性化すると、利用者に迷惑をかける事態にも発展しかねません。BPOの活用によって業務の効率化・合理化を図ることは、職員だけでなく利用者にとってもメリットとなり得るのです。
近年はデジタル化やDX化など、時代のニーズに応じて業務の進め方も変化しつつあります。自治体業務も例外ではなく、時代に合った仕組みを取り入れる必要に迫られていくことになるでしょう。
BPOを導入することによって、デジタル化・DX化が可能な業務の提案や、導入・運用に関するサポートを受けられます。大規模なシステムを導入することなく、デジタル化・DX化に必要なノウハウやリソースを活用できることは、自治体業務にBPOを導入するメリットの1つといえるでしょう。
自治体業務にBPOを導入したことにより、課題解決につながった事例を紹介します。福島県須賀川市において、新庁舎への建て替えを機に市民課窓口業務と施設管理等業務をエイジェックグループに委託した事例です。
自治体が抱えていた主な課題は、市民向けサービスの向上とコスト削減を両立させることでした。従来、業務ごとに委託事業者への発注を行っていたため、職員は個々に委託先との調整を進める必要がありました。職員が業務過多になりやすく、窓口業務の対応が遅くなり、住民の待ち時間が増えてしまうなどの課題を抱えていたのです。
職員の負担を軽減させると同時に、行政サービスの向上や行政改革を実現するにはどうすればよいのか。課題解決の方策として選んだのがBPOだったのです。
BPOサービスを活用した業務は次の通りです。
上記を一括して業務委託することにより、委託窓口を一本化し個々の職員による煩雑な調整業務を削減しました。包括業務委託により、各種調整が必要な際にワンストップで対応可能となったのです。
BPOの導入を通じて実現したこととして、主に次の6点が挙げられます。
包括委託としたことにより、窓口従事者や清掃クルー、警備員など業務に携わる一人ひとりが「市役所の顔」であることを認識し、住民の皆さまや職員の方々に寄り添ったサービスを提供することができています。
業務の一部を切り出して委託するアウトソーシングの場合、委託先の事業者は業務の全体像を把握しづらい可能性があります。委託先の業務が前後の工程や自治体業務全体に及ぼす影響を想定しにくいため、かえって利便性を低下させる原因にもなりかねません。包括業務委託によって業務間の分断を防ぎ、総合的な行政サービスの質向上に寄与した事例といえるでしょう。
自治体業務にBPOを導入する際には、いくつか注意すべき点があります。BPOの効果を最大限に発揮するためにも、次の点を押さえておきましょう。
BPOサービスと一口にいっても、対応可能な業務は事業者によってさまざまです。民間企業の業務に関しては実績が豊富であっても、自治体業務に関する実績がほとんどない場合、自治体業務の実態を踏まえた対応は現実的に難しいことも想定されます。
自治体業務の受託実績が十分にあるか、自治体業務特有の事情を理解しているか、十分に確認した上でBPO事業者を選定することが大切です。過去の実績や具体的な事例について問い合わせるなど、自治体業務への対応状況を必ずチェックしておきましょう。
BPOとアウトソーシングでは委託できる業務の範囲が大きく異なります。事業者の中には、「電話代理業務のみ」「警備業務のみ」など、一部の業務に特化したアウトソースにしか対応できないケースも少なくありません。
自治体サービスの利用者にとって、部門間の分断は不満やストレスを抱える原因となります。業務の一部を切り出して委託するのではなく、業務を総合的に委託できる事業者を選定するほうが合理的でしょう。業務の企画や設計、施策の実行、分析までを包括的に委託できる事業者を見極めるのがポイントです。
自治体業務では、利用者の個人情報をはじめとする機密性の高い情報を扱います。情報管理体制が整備されている事業者を選ぶことは必須条件といえるでしょう。自治体業務に関する実績とあわせて、情報管理の体制についても必ずチェックしておくことが大切です。
たとえば、プライバシーマークやISOの取得状況はBPO事業者の管理体制を判断する基準となり得ます。契約前に必ずセキュリティポリシーの提示を依頼し、信頼できる事業者かどうかを見極める必要があるでしょう。
自治体業務におけるBPOサービスの活用は年々拡大しており、業務の効率化や合理化、DX化に向けた対策として一般的なものになりつつあります。職員の負担軽減を実現するとともに、行政サービスの質向上を図るためにもBPOの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
エイジェックグループでは、自治体業務に特化した「自治体総合BPO」を提供しています。窓口業務や施設管理業務の包括委託に対応していますので、自治体様のニーズに合わせた業務範囲での委託が可能です。全国の116の自治体様より業務をご依頼いただいてきた実績により、これまでに培った実績やノウハウに根差した質の高いサービスを提供できます。BPOを検討中の自治体様は、ぜひエイジェックグループの自治体総合BPOをご活用ください。
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